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9月20日の茂木大臣の福島第1原発5、6号機に関する発言 [科学技術とジャーナリズム]

経産相「タンク増設できる」 5、6号機廃炉の利点強調  :日本経済新聞
 「茂木敏充経済産業相は20日、閣議後の記者会見で「東京電力福島第1原発5、6号機の廃炉により近傍の敷地にスペースが生まれ、汚染水をためるタンクを増設できる」と述べ、5、6号機を廃炉にする利点を強調した。(後略)」

* * * * *

 このニュースを読んだ時、唖然とさせられました。
 原子力発電所はその運転により、炉心近くの構造物が放射化されます。このため、燃料棒を撤去した後もその放射線環境にあわせ、被爆低減のために人のアクセスが制約されます。また、解体する構造物などの放射化の度合いによって遮蔽対策を施したコンテナなどに収容する必要があり、廃棄物量は使用するコンテナなどの量を含めて検討する必要があります。そして被爆低減のために解体の時期を遅らせることもおこなわれます。
 現在、日本で商用炉として初めての廃炉措置が日本原子力発電株式会社の東海発電所で実施されていますが、その検討・計画は運転中から行なわれていました。また、廃炉工事で生じた放射性廃棄物の保管場所はその敷地内(例えば福島第1原発であれば福島第1原発内)が原則となります。正常に運転されて原子炉であっても廃炉は非常に長期間を要するものです。現実的に考えれば1~4号機が大きく破損した状態でそれに隣接する5, 6号機を再稼動というのはありえないことです。しかし、廃炉の手続きをすることで資産上の取り扱いが変わり、企業としてさらに特別損失などを計上する必要も生じ、この面の影響も考慮の必要があると考えられます。

 大臣の発言は一般のビルの解体工事のような認識で、廃炉というものを全く理解していないことを証明するものです。NHKのニュースなどを通じて誤った認識が国民に流布するのは問題以外の何者でもありません。また、大臣のまわりに技術のわかるブレインがいないことも透けて見えます。
 「この国は・・」
です。

(本blogはFacebookに9月20日書いたものをリライトしたものです。)


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経産相「タンク増設できる」 5、6号機廃炉の利点強調  :日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF20008_Q3A920C1EB1000/
東海発電所の廃止措置 日本原子力発電株式会社
http://www.japc.co.jp/project/haishi/

追記
 茨城新聞の2013年5月20日(月)の記事で「廃炉の道険しく 東海原発、解体が本格化 廃棄物処分先決まらず」があるのを見つけました。「事実報道」として大臣の言を垂れ流しているマス・メディアに失望させられましたが、「ジャーナリズムが、まだ、生きているマスメディアがある」と少しだけ、安心させられました。
 なお、廃炉技術については原子力バックエンド推進センターにより『デコミッショニング技報』が1989年の第1号よりバックナンバーが公開されています。この内容はとても参考になります。

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廃炉の道険しく 東海原発、解体が本格化 茨城新聞ニュース
http://ibarakinews.jp/news/news.php?f_jun=13689728371212
デコミッショニング技報|RANDEC-公益財団法人 原子力バックエンド推進センター
http://www.randec.or.jp/publish/gihou.html

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うえいぱうわ

この国の政治屋さんは本日も平常運転ですね。
ただ、この問題に関しては、扱いを間違えると
国を滅ぼしかないでしょうから、慎重に事に
あたってもらいたいです。
by うえいぱうわ (2013-09-21 21:06) 

robotic-person

>うえいぱうわさん、
小学生の時、新聞を読んで「政治家はなぜ、平気で嘘をついたり、悪いことをするのだろう」と涙したことを思い出しました。「その時の自分から成長していないなあ・・」と思う一方、「政治家も成長していないなあ・・」です。

また、伝聞を「事実報道」として無批判に垂れ流すマスメディアの科学技術に対する知識の無さも大きな問題なんですが・・ (T_T)

by robotic-person (2013-09-21 21:30) 

noga


安全は大好きだ。神話も好きだ。安全神話作りは得意で、すぐに信じられる。広めるのもたやすい。
我が国の国策は、安全神話と深く関係しているに違いない。
だが、最悪のシナリオを想定するのはひどく難しい。恣意(本音)の人ならそうなる。
これは、平和ボケのようなものか。

太平洋戦争初期に、フィリピンの米比軍はキング少将もジョーンズ少将も投降して、75000人以上の将兵の命を救った。
太平洋戦争後期に、日本軍は米空軍の飛来をゆるし、1945年3月10日未明、東京の下町の江東地区がB29約300機による空襲をうけ、死者10万をこす被害を出した。
日本人の指導者には、作戦の成否を予測する力はないのか。
人命の尊重はどのように考えられていたのであろうか。

それでも日本人は、原発の再稼働を選んだ。
一億総ざんげへの道。動き出したら止まらない。
この道は、いつか来た道。ああ、そうだよ、民族の歴史は繰り返す。

意思のあるところに方法はある。(Where there’s a will, there’s a way).
意思のないところに解決法はない。
意思は未来時制の内容であり、日本語には時制がない。
それで、日本人には意思がなく、解決法が見つけられない。
自然鎮火を待つのみか。成り行き次第。

>親戚のじいちゃんはガ島で地獄を見てきた。
>「あれは決して国のために尊い命を落とす姿じゃ無かった」という言葉を忘れない。

兵卒は優秀。参謀は愚鈍。日本語脳の定めであるか。理不尽に耐える心を養うべきか。
耐え難きを耐え、忍び難きを忍んで、もって万世のために太平を開かんと欲す。

不自由を常と思えば不足なし。
座して死を待つか、それとも腹切りするか。
私の父は、玉砕した。何のお役に立てたのかしら。
安らかに眠ってください。過ちは繰り返しますから、、、、

わかっている、わかっている。皆、わかっている。
ああしてこうすりゃこうなると、わかっていながらこうなった、、、、、
十二歳のメンタリィティには、知恵の深さが見られない。教養 (洞察力) がない。
わかっちゃいるけど やめられない。ア、ホレ、スイスイ、、、、

白く塗られた黒いオオカミの足を見破ることは難しい。
だます人は悪い人。だまされる人は善良な人。おとり捜査は難しい。
この調子では、人の命はいくつあっても足りるものではない。
我々は、自らは望むことなく危機に陥る民族なのか。


http://3379tera.blog.ocn.ne.jp/blog/





by noga (2013-09-21 23:39) 

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