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テレビ製造のビジネスモデル [科学技術とジャーナリズム]

regza32zp2.jpg

 先のblogで東芝のテレビ事業縮小について書きました。
 4Kテレビのことも含めて、テレビ製造に関するビジネスモデルについて私の考えていることを少し整理してみます。


■ テレビのビジネスモデル
 「テレビのビジネスモデル」というと今日では「広告媒体としてどうか」という議論が大多数と思われます。インターネットの普及が一因となる出版不況(携帯電話の普及による通信費の増が書籍などの購入にあてられる家計を圧迫していることも出版不況の大きな要因になっていると考えていますが)と同様、テレビ業界もインターネットの普及による広告収入への影響があり、これに関するものが多くあります(末尾にリンク)。
 しかし、製品ライフサイクル(Product life cycle; 製品が市場に登場してから退場するまでの期間における売上と利益の変化で示されることが多い。マーケティング戦略の基本的な情報)として語られることが多いですが、これもテレビ製造のビジネスモデルに対応するといえます。社団法人家庭電気文化会の「家電の昭和史テレビ」にわかりやすく、国内のテレビの普及の歴史がまとめられていますが、白黒テレビ、カラーテレビ、音声多重放送、ブラウン管サイズの大型化、ハイビジョン、液晶、デジタル放送というように、消費者が使用中のテレビを陳腐化させて購買行動に走らせるテレビを出し続けること、従来機種にない付加価値をつけることで価格を維持することがビジネスモデルといえます。(このような家電製品は他にも多くあります。)


■ テレビの市場構造の変化
 私の住処のLDで使用のTV、REGZA 32ZP2(上図)はちゃんとした(?)テレビですが、作業部屋はPC作業中にTVを「ながら見」できるようにPCのHP Pavilion Desktop PC m9380jp/CTにTVチューナーカードのPIX-DT090-PE0を取付けたもの、ベッドサイドは余剰となったPCディスプレイLCD-MF221XBR(I・O DATA)とTVチューナーHVTR-BCTLをHDMI接続したもの、そしてモバイル用PCのLaVie Light BL350/CW (NEC)にはUSB接続の地デジチューナーDT-F110-U2(BAFFALO)を組合せたものです。「テレビの市場はテレビ製造メーカーだけのものでなくなっている」ことを示す典型的な事例といえます。
 家電が「個電」化していることはよくいわれます。一方、PCは情報機器として個人の必需品となりつつあります。「情報」という観点から見ればTVが大画面である必要性は少なく、「TVとして使用できるPCがあれば・・」となります。例えば、「HP ENVY 23-c260jp/CT All-in-One PC 東京生産 3波ダブル地デジ カスタムモデル」は93,030円(税込み)といった価格で販売されています。国内メーカーのTV内蔵のPCの販売価格はこれより高く、厳しい競争もあります。
 テレビ、PCと区別することはあまり意味のないことになりつつあり「テレビ放送を流す機器」と機能面から大きく捉える必要があると思います。そしてテレビ事業、PC事業と分け続けることはビジネスチャンスを失することにもつながるように思われます。

<< 上の図 >>

東芝:ニュースリリース (2011-04-20):電源不要の軽量専用メガネで高画質3D映像が楽しめる液晶テレビ 「レグザ ZP2シリーズ」の発売について
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2011_04/pr_j2007.htm
ZP2-TOP|3Dテレビ・LED液晶テレビ・薄型テレビ|REGZA:東芝
http://www.toshiba.co.jp/regza/lineup/zp2/index_j.htm

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HP Pavilion Desktop PC m9380jp/CTにPIX-DT090-PE0を取付けた状態
PC m9380jp-CTにPIX-DT090-PE0を取付、BSデジタルを快適視聴:ロボット人間の散歩道:So-netブログ
http://robotic-person.blog.so-net.ne.jp/2009-06-14

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TVチューナーをHVT-BT200 からHVTR-BCTLへ更新:ロボット人間の散歩道:So-netブログ
http://robotic-person.blog.so-net.ne.jp/2013-07-07
寝室のCDレシーバ、RD-VH7PC から R-K731 に更新:ロボット人間の散歩道:So-netブログ
http://robotic-person.blog.so-net.ne.jp/2013-10-19

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DT-F110-U2(BAFFALO)とLaVie Light BL350/CW (NEC)の組合せで地デジを見る
ネットブック LaVie Light BL350-CW で地デジを楽しむ:ロボット人間の散歩道:So-netブログ
http://robotic-person.blog.so-net.ne.jp/2011-09-23


■ 4Kテレビ
 テレビ製造業が生き残っていくためには前述のように消費者行動に結びつく訴求力のある機能を有した製品を出し続けることが必要ですが、2010年頃、大騒ぎされた3Dテレビはヒットには結びつきませんでした。(→ 私の2012年1月にやってきたREGZA 32ZP2も3D対応ですが、その機能が欲しくて入手した訳でなく、32型でフルハイビジョンのパネルを使っているのは32ZP2以外に見当たらなかったことによります。) *
 現在、4Kによる高付加価値(高価格維持)のために4Kテレビの販売に力が入れられていますが、「4Kのテレビが他の居住空間を圧迫しないで無理なく設置できる面積の住まいに住んでいる人はどれ位いるのだろうか」という販売数量に結びつくベースの数も気になります(私のように「4K、すごい技術だなあ」と感心するものの大画面を必要としていない人の割合も・・)。無論、製品が登場しなければ潜在需要の掘り起こしはできないという面がありますので軽々に結論を出せません。ただ、先日、ケーズデンキのテレビ売り場を眺めていて50型で10万円の価格がつけられた液晶テレビ(HISENSEの製品)が売られているのを見て、「大きい画面を求め、画面の繊細さは気にしない消費者にとってはこちらの方が魅力になるのだろうなあ」と考えさせられました。4Kテレビ、頑張って欲しいのですが、「技術偏重で市場規模を読み誤ってはいないだろうか・・」、「恐竜のようになりはしないか・・」と気になります。

 ところで9型のテレビ、KV-9AD2 (SONY)を以前、使っていたこともあり、「TVチューナーHVTR-BCTLとHDMI接続してテレビ画像を表示できるtablet機器が登場しないかなあ・・」(現在、tabletの画像をHDMI接続してテレビに表示できるものはあるのですが、その逆は・・)です。


* 【追記】HOSPEX Japan 2013で内視鏡下による手術映像を3Dで表示していましたが、この分野は3D映像の技術が不可欠であることを実感させられました。

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東芝のテレビ事業に関するニュース:ロボット人間の散歩道:So-netブログ
http://robotic-person.blog.so-net.ne.jp/2013-09-30-1
家電の昭和史テレビ(社団法人家庭電気文化会)
http://www.kdb.or.jp/syouwasiterebi.html
国内電機メーカー「4Kテレビ」に光明 3Dテレビの「二の舞」にはならない J-CASTニュース
http://www.j-cast.com/2013/09/19184242.html?p=all
3Dテレビの終わり ギズモード・ジャパン
http://www.gizmodo.jp/2013/07/3d_83.html

【広告媒体としてのテレビに関するもの】
新たなビジネスモデルを模索する米国テレビ業界(三井住友銀行企業調査部、2011 年 7 月)
http://www.smbc.co.jp/hojin/report/monthlyreviewtopics/pdf/2_00_CRSDMR1107.pdf
・米国のテレビ業界(日本と異なりCATVが大きな位置にある)に対するインターネットの影響などを広告を中心としたビジネスモデルから概説
みずほ情報総研:Report:次世代のテレビと広告ビジネスの変容(NAVIS 015 | JANUARY 2012)
http://www.mizuho-ir.co.jp/publication/navis/015/report03.html
・タイトルの通りの内容
ソーシャルTVサービスのビジネスモデルと可能性(1) - CNET Japan
http://japan.cnet.com/news/commentary/35026683/
「テレビというビジネスモデルの絶望と希望」 第126回勉強会 社会人のための勉強会 SundayLAB
http://sundaylab.jp/2011/12/post_122.html
日本のTV市場再興に向けた新ビジネスモデル ナレッジパートナー 最新市場分析レポート CEATEC JAPAN 公式サイト
http://www.ceatec.com/report_analysis/ja/ra_0830.html
新聞・テレビは新ビジネスモデル急務=トムソン・ロイター討論会 ビジネスニュース Reuters
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-37235520090330
ビジネスモデルから見た放送の未来
http://www.it-ei.net/forum/itei2006/itei2006_summary2.html
曲がり角に来たアメリカテレビビジネス JOURNAL FERMAT
http://www.defermat.com/journal/2012/000961.php
「インターネットと情報処理が刺激的な 娯楽経験を演出するスマートテレビ」、知的資産創造(2010年12月)
http://www.nri.com/jp/opinion/chitekishisan/2010/pdf/cs20101207.pdf

【製品ライフサイクルに関係するもの】
中小企業庁:(3)商品ライフサイクルの短期化
PLM(製品ライフサイクル管理) 富士通
http://jp.fujitsu.com/journal/category/business/plm/
製品ライフサイクル高信頼化−仕様と実装と環境のギャップをライフサイクルで管理する技術(東芝レビュー)
http://www.toshiba.co.jp/tech/review/2009/08/64_08pdf/a02.pdf
利根川孝一「ビジネスモデル -概念から実践的活用へ-」、政策科学11-2,Jan. 2004
http://www.ps.ritsumei.ac.jp/assoc/policy_science/112/112_02_tonegawa.pdf

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うえいぱうわ

それこそ、家電メーカーじゃなくてもテレビを作れる時代に
なってきてますし、テレビそのもののコンテンツ力が不足
してるのも、テレビ離れの原因じゃないかなあと。
NHKの強制的な契約にも疑問を感じますし(笑)
ハード的にいえば、メーカーの売りたい物とユーザーが
欲しい物に、かなりの温度差があるような気がします。
by うえいぱうわ (2013-10-24 19:00) 

robotic-person

>うえいぱうわさん、
「テレビそのもののコンテンツ力が不足」という鋭い指摘、その通りですね。
デジタルテレビに変わった直後は「繊細感のあるきれいな画像」で売れたかもしれませんが、普及すれば内容が問われますものね・・ (^_^;
私の見るテレビ番組、ニュース、BSの海外ニュース、ドキュメンタリー、科学番組、NHK EテレのETV特集(NHKに残っている報道機関としての良心が伝わってくるものですから)などで民放テレビは全く見ない状態となっています。

by robotic-person (2013-10-24 21:00) 

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