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「空いた椅子に刻んだ約束」 [本と映像・音楽の話]

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 先のblog「私たちの表現の不自由展 その後」を7月7日、名古屋市中区役所 市民ギャラリー栄で見たことを書きました。同展でキム・ソギョン / キム・ウンソン (著), 岡本有佳 (訳)「空いた椅子に刻んだ約束」(2021年、世織書房)を「私たちの表現の不自由展 その後」の会場で入手しました。
 『日本の読者のみなさんへ』に「(略) 2011年に《平和の少女像》を作って以来、「反日の象徴」と誤解され、現在も絶えずそうした誤解をする動きがあるなかで、《平和の少女像》の真実を伝えようと、この本を出版しました。(略) 《平和の少女像》は、みなさんが空いた椅子に座り、少女の手を握ったり目を合わせてくれた時に完成した作品となります。(略)」を読み、「会場で椅子に座ればよかった」と反省することになりました。

 「名古屋市は8日、同市中区栄4丁目の市施設「市民ギャラリー栄」に届いた郵便物を開封した際に破裂音がした問題を受け、11日まで同施設を臨時休館すると発表した。」(7月8日、朝日新聞DIGITAL)と報じられました。11日まで開催予定だった「私たちの表現の不自由展 その後」はその中止を余儀なくされました。そして他の地域での開催はより難しくなったことが容易に想像されます*
 「私たちの表現の不自由展 その後」の開催を苦々しく思っていた河村たかし市長にとっては朗報となったことでしょう。先月のblogで2012年に新宿のニコンサロンで開催予定だった元従軍慰安婦に関する写真展に対してネットや電話での攻撃でニコンが写真展を中止したことを書きました。今回の爆竹は「目的のためには犯罪といわれようと何でもやる」という同じ連中が関わっていて、愛知県知事リコール不正署名事件もあり、河村たかし市長が本件に全く関係ないとは思えません(不自由展に反発する団体による「あいちトリカエナハーレ」(7月9~11日)も開催中止となりましたが、その展示内容があまりにひどくて市民の共感を得られるものでないため、中止にもっていこうと爆竹か何かを市民ギャラリー栄に送り付けたことも想像されます)。
 川崎市は「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」と題する差別禁止条例を全国で初めて刑事罰を科す内容として2020年7月に施行しました。東京新聞の2021年5月31日の記事でその成果と課題が記されています。そして根の深い問題であることにやりきれなさを感じます。

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会場で購入の「エコー」(No.58、No.59)(旧日本軍による性的被害女性を支える会)


* 追記(2021/7/16)「表現の不自由展かんさい」(7月16~18日、大阪府立労働センター「エル・おおさか」)の開催を認めた施設側が名古屋の事件によって利用許可を取り消したことに対して大阪地裁が使用を認める決定を出し、大阪高裁への施設側の即時抗告が棄却され、「表現の不自由展かんさい」は予定通り開催されることになりました。妨害のためには何でもやるあの連中の行動が抑えられ、無事に不自由展が会期を終えられますように・・(CAMPFIREの「表現の不自由展かんさい」を市民の力で実現しましょう! 」へ少額ですが、支援させていただきました)。

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「私たちの表現の不自由展 その後」(2021年7月6~11日、名古屋市中区役所 市民ギャラリー栄):ロボット人間の散歩道:SSブログ
https://robotic-person.blog.ss-blog.jp/2021-07-08
「なぜ、いまヘイト・スピーチなのか ―差別、暴力、脅迫、迫害―」:ロボット人間の散歩道:SSブログ
https://robotic-person.blog.ss-blog.jp/2021-06-27
名古屋市、「不自由展」会場を休館 事実上中止に:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASP785H5YP78OIPE01D.html
愛知県知事リコール不正署名事件:時事ドットコム
https://www.jiji.com/jc/v7?id=aichirecall
川崎市:「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の解消に向けた取組
https://www.city.kawasaki.jp/250/page/0000088788.html
川崎市:「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」
https://www.city.kawasaki.jp/shisei/category/60-1-10-0-0-0-0-0-0-0.html
ヘイトスピーチ解消法5年 露骨なデモ減ったが…やまぬ攻撃「差別を可視化し、実効性ある規制法を」:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/107571
「表現の不自由展かんさい」7月16日から開催へ 施設側の即時抗告を大阪高裁が棄却 | MBS 関西のニュース
https://www.mbs.jp/news/kansainews/20210715/GE00039271.shtml


空いた椅子に刻んだ約束

空いた椅子に刻んだ約束

  • 出版社/メーカー: 世織書房
  • 発売日: 2021/07/02
  • メディア: 単行本



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青い森のヨッチン

今は川崎を離れていますが生まれも育ちも川崎なのであの条例が日本で最初に制定されたというのも何となく理解できます。
なんたって道路を挟んで民団と総連の支部が向かい合っているような街なのでいろいろあります。
でも中にいるとそれほど差別とかは意識しないで育ったけど外からきて騒ぐ人が問題を起こしているようにも見えます。
先日の記事を見た後に爆竹のニュースを知りまぁそういうことになっちゃったかぁと思いました。
by 青い森のヨッチン (2021-07-11 15:00) 

robotic-person

>青い森のヨッチン さん、
日本は売春防止法の施行(1958年)までの間、半ば公認で売春が行われていた国です。そのような国の軍人が戦時中、他国の女性に対して行ったことは容易に想像できます。そしてそれを認めず、否定する人々は思考停止しているとしか思えません (T_T)

by robotic-person (2021-07-11 22:29) 

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