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「調査報道」の社会史(NHK放送文化研究所) [科学技術とジャーナリズム]



 早稲田大学メディア文化研究所の11月例会(11月8日)に参加しました。講演は言論プラットフォーム「アゴラ」編集長の新田哲史氏の「ネット言論最前線からの報告」で都知事選におけるネットジャーナリズムの影響、スマートフォンを通して得られるニュースの影響などで、約10年前に私がジャーナリズムについて学んでいた時と大きくメディア環境が変わったことを実感させられました。
 一方、ネットジャーナリズムについては調査報道という観点から不安があります。以下、『放送研究と調査』(NHK放送文化研究所)の「調査報道」に関する連載記事の第2回でメディア研究家の小俣一平氏によって示される調査報道に関する定義を次に紹介します。

* * * * *

 日本の「調査報道」の第一人者・朝日新聞(現・東京経済大学大学院講師)の山本博が掲げる4原則である。

① 自分(あるいはチーム)が書かなければ,日の目を見ない事実。
② 権力,権威ある部署,企業(あるいは,その個人)などが隠したがる事実。
③ 発表に頼らず自らの調査能力で発掘する。
④ その事実を新聞掲載(テレビ,ラジオ,雑誌報道)によって暴露し,社会に知らしめる。

 筆者(メディア研究家 小俣一平)はこの山本の4条件に,下記の3条件を提示し、7つの条件を満たすものを「狭義の調査報道」と定義づける。

⑤ この報道の重要性を他社も認識して遅かれ早かれ追随せざるを得ない状況を引き起こす。
⑥ 各社の波状的な報道が,読者,視聴者や国民全般の関心を呼び起こす。
⑦ その結果,権力や権威ある者や組織が何らかの対応を迫られ,そのことが社会に影響を与える。

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早稲田大学大学院 科学技術ジャーナリスト養成プログラム:ロボット人間の散歩道:So-netブログ
http://robotic-person.blog.so-net.ne.jp/2006-04-08
アゴラ 言論プラットフォーム
http://agora-web.jp/
放送研究と調査(月報)|NHK放送文化研究所
http://www.nhk.or.jp/bunken/book/monthly/index.html
放送研究と調査(月報)2009年3月 | NHK放送文化研究所
「調査報道」の社会史 ~ 第 2 回 「調査報道」と「特別調査報道」 (p.34~47)
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2009_03/090303.pdf
放送研究と調査(月報) 2009年4月 | NHK放送文化研究所
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/title/month/2009/2009_04/index.html
「調査報道」の社会史 ~第1回 調査報道とは何か~ | 調査・研究結果 - 国内放送事情 | NHK放送文化研究所
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/domestic/091.html
「調査報道」の社会史 ~第2回 「調査報道」と「特別調査報道」~ | 調査・研究結果 - 国内放送事情 | NHK放送文化研究所
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/domestic/093.html
「調査報道」の社会史 ~第3回 「特別調査報道」の社会的影響~ | 調査・研究結果 - 国内放送事情 | NHK放送文化研究所
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/domestic/094.html
「調査報道」の社会史 ~第4回 「調査報道」を阻む壁~ | 調査・研究結果 - 国内放送事情 | NHK放送文化研究所
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/domestic/097.html
「調査報道」の社会史 ~第5回 「調査報道」がジャーナリズムを活性化させる~ | 調査・研究結果 - 国内放送事情 | NHK放送文化研究所
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/domestic/099.html
花田達朗 ジャーナリズムを経済的にどう支えるか 「アジェンダ―未来への課題」 第32号(2011年春号)
http://www.hanadataz.jp/w1/hanada/20160401.html

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ZUNYA

r-pさん、こんばんは。

『消えた警官 ドキュメント菅生事件(坂上遼【著】=小俣さんのPN)』と『追及 体験的調査報道(山本博【著】=数年前に死去。リクルート事件報道で有名)』の2冊を持っているんですが…昨今のジャーナリズム界に蔓延する臆病風(過度の委縮・自己規制)を見る限り、この国においては“硬派な調査報道”などもう期待できないのかなァ…と悲しくなります。

『自由で拘束されない新聞(報道機関)のみが、政府の欺瞞を効果的にあばく事が出来る』

かつて、米最高裁のブラック判事はこう述べましたが、現在の政治状況に対してたいへん示唆に富む言葉ではないでしょうか…。

※12月5日に八重洲ブックセンターで辺見庸さんの出版記念講演があるので、久しぶりに上京してみよう!と思ってます。時代状況の余りの不穏さに、当代きっての硬派ジャーナリスト(作家・詩人)の言葉をこの耳で直接聞いておかねばならない…そんな気がしてなりません。

では、また!




by ZUNYA (2016-11-19 01:24) 

robotic-person

>ZUNYAさん、
「インターネットの台頭で既存のマスメディアの経営環境が厳しくなり、調査報道をじっくり行なうことが許されない経営環境になってきていることも・・」と現在の状況について考えています。
by robotic-person (2016-11-19 01:44) 

ZUNYA

確かにネットという無料(≒少額課金)メディアに対しては劣勢だと思いますし、既に経営も限界に来ている(※毎日新聞の元経営幹部氏は『新聞はビジネスモデルとして破綻している…』と自身の新書でも述べています…)ので、近い将来、メディア企業連合の構想もあるようです。

しかし、本質的には「内容のつまらなさ」=「記事・番組の政府広報化」こそが、そもそもの読者・視聴者離れ(経営危機)を生んでいるのだと思いますし、バブル時代に既にその現象が起きていたにも関わらず、何ら手を打ってこなかったメディア自身にも問題があるのではないか…とも思います。

調査報道に時間と資金は不可欠ですが、それ以前の問題として「そもそもの“情熱”が現場にある(あった)のだろうか?」と、疑わしく思えてなりません。

...以上は僕自身の見解に過ぎませんが、メディアに関心がある僕ですら、現状の新聞・TVの存在を「特に必要だと感じない」のは確かであり、その意味においては「独自の調査報道の復活」こそが、メディア復活のカギではないか…と思うのです。

それでは、また!

※ちなみに、先のコメントで触れた辺見さんは、かつての情熱を失ってしまった社の姿勢に抗議して通信社を辞した人であり、例え「(資金に乏しい)たった一人でも優れたレポートは可能なのだ」という事を実践して見せてくれている稀有なジャーナリストですし、社の後輩に当たる魚住昭さんなども同様に、「給与待遇は今ほどでなくて全く構わないから、もっと自由に調査報道をさせて欲しい」との主張をしています。







by ZUNYA (2016-11-19 12:44) 

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