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福島第一原発のピットの汚染水の流出防止工事について [科学技術とジャーナリズム]

 福島第一原発2号機のピットの海に面している部分に縦約20cmの亀裂があり、高い放射線量を持つ汚染水が海に流出する原因となっていることがわかり、この亀裂を塞ぐ対策工事が行われていることを昨日のニュースで知りましたが、今朝の新聞(毎日新聞)で東電の応急作業では流出が止まらないことを報じていました。
 昨日のニュースを聞いた時、「ピット内に溜まった水の中にコンクリートを打設することになるが、水中コンクリートの打設工法を理解して仕事が行われているだろうか?」と不安がありました。

 コンクリートは水面から水底に向かって落下するような形で投入すると、水と接触している部分でセメント分が溶け、砂などの細骨材が分離して水底についた時点ではコンクリートとして非常に低質なものとなってしまいます(例えば止水性のないコンクリート)。このため、トレミー管といわれるパイプを水中に立て(パイプの先端は水底に接触して塞ぐ状態)、このパイプにコンクリートを満たし、そしてトレミー管を10cm程度引き上げることで、コンクリートが水中を落下することを防ぎ、品質のよいコンクリートを打設します。また、コンクリートを水中に打設した場合、横に流れてしまいますので望ましいのは亀裂の見つかった部分に型枠を設けてその型枠の中に水中コンクリートを打設する方法です。(これは高い放射線が測定されている中、難しいですが・・)
 コンクリートの配合も気中コンクリートと異なるもので、下記のハイドロクリートのように水中での耐分離性を高める粘ちゅう剤と施工性・充填性を高めるための流動化剤を添加剤したコンクリートも用いられます。

 福島第2原発の中でどのような工事が行われているか伝わってこない現状であり、上記のような水中コンクリートを打設してうまくいかなかったのか、それとも水中コンクリートのことを知らないで単に水中にコンクリートを打設してしまったか、原因を知ることはできません。

 ただ、現在の事態は、日本中の建設分野の専門技術者の知恵も活用して取り組まねばならない状態にあるのは確かなことだと思います。
 ピットからの汚染水の流出が止まりますように・・。


【4月4日追記】
 4月4日午後7時のNHKニュースで短時間示されたピットの写真より、ピット内がコンクリートで満たされ、2本のトレミー管らしいものが見えました。これが私が理解した通りの内容としたら、コンクリートは急には固まらないため、汚染水の流れている状態が水道(みずみち)をつくってしまったのでしょうか・・。

【4月6日追記】
 1500リットルの水ガラスの周辺地盤への注入により、ピットから海への汚染水の流出が止まったことが報じられました。しかし、まだ、他から漏れる可能性があり、予断は許されません。

高濃度の汚染水 流出が止まる NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110406/t10015124541000.html

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ハイドロクリート/水中不分離性コンクリート:三井化学産資株式会社
http://www.mitsui-sanshi.co.jp/product/p3-5.html
水中不分離性コンクリート(ハイドロクリート):日本海上工事株式会社
http://www.kaijyokouji.co.jp/jsw/con_hc.html
鹿島:プレスリリース:海中暴露20年!ハイドロクリート長期耐久性試験を実施
http://www.kajima.co.jp/news/press/200704/13c1fo-j.htm
特集:本州四国連絡橋 座談会 (鹿島)
http://www.kajima.co.jp/news/digest/jun_1999/tokushu/toku3.htm

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コメント 1

うえいぱうわ

やはりコンクリートはうまくいかなかった
ようですね。
あの手この手を繰り出すのは良いのですが、
付け焼刃みたいな不安があります。
現場で奮闘している方達にはこれ以上無理
して欲しくはないですが、汚染の拡大は
止めて欲しい。複雑な心境です。
by うえいぱうわ (2011-04-03 17:24) 

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