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椅子の選び方 [住居]

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 アムステルダムからそんなに遠くない場所でシンポジウムがあって参加したことがあります。そこでトイレに入って驚かされたのが小便器のアサガオの高さでした。「(こちらの人間の)脚の長さにあわせてこの高さにしたのかなあ」と昭和生まれの日本人体形は使い心地の悪さを実感させられました。

 さて、デザイナーの名前を冠した椅子を持つのがステータスのように扱われているのが目にはいることがあり、少々、気になっています。椅子は体に接するもので衣服の延長、つまり体にあっていることを条件に選ぶ必要があります。私もデザインに惹かれてそのような椅子に「試しに」と座ったことがあります。しかし、上記のアサガオのように座り心地に違和感がありました。そこで余計なお世話なのですが、「体にあった椅子である事を確認して選んでいるのだろうか?」と老婆心が働いてしまいます。(デザイン的に完成された椅子は「脚の長さを短くして」などの手術を行うとデザインバランスを崩してしまうため、手がだせません。また、座面長は手直しのしようがありません。)

 気持ちのよい椅子は座った時、大腿部、腰部、そして背中をきちっと支えてくれるもので、椅子に座った時に感じる体からのフィードバック信号に耳を傾けさえすれば難しい選び方ではありません。飾っておくものでなく、毎日、使うものですから使い心地が第一番に、自分自身の体から受ける感覚を大切にしてほしいと思うのですが・・。


■ 書籍の課題
 「部屋が広く見えるから・・・」と座面の低いソファーが売られているのを見ると「椅子文化後進国」なんだなあと考えさせられる一方、次の先人の残した「課題の多い数値」がいまだに伝承されているのかなあ、と考えさせられます。

 小原二郎編の『インテリアデザイン』(1973、鹿島出版)で「身長を基準にした設備・ものの寸法のSlinging scale」というものが紹介されています。この中で軽休憩用のいすの高さとして170cmの身長で31cm位を示した図があります(野呂影男編:『図説エルゴノミクス』(1990、日本規格協会)で収録の図の引用文献として書かれているのを見ての孫引き)。一方、J.D. Chiara, J. Panero & M. Zelnikの"Time-saver Standards for Interior Design and Space Planning"(1991, McGraw-Hill)でSofaの座面の高さとしてLarge Sizeでは1'15 to 1'6"、Medium Sizeでは1'4" to 1'15"と記載があります。1"は25.4mmですから、Medium Sizeで406.4~431.8mm。日本では靴を脱いで使用すること、それから体格の差を割り引いても、日本の31cm位というのとは開きがあり過ぎます。
 インテリアデザインにたずさわる人たちがこの寸法を、自分の座っての感性に目を瞑り、「書いてあるから」と無批判に受け入れ、専門でない人達にこれを流布しているとしたら、随分、罪作りです。

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カリモク家具スペシャルショップ/スタイルガイド
http://www.ldt.co.jp/karimoku/style/index.html
・ 椅子の設計に対して背景にある考え方に触れることができます。


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図説 エルゴノミクス

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日本規格協会
  • 発売日: 1990/02
  • メディア: 単行本



Time-Saver Standards for Interior Design and Space Planning

Time-Saver Standards for Interior Design and Space Planning

  • 作者: Julius Panero
  • 出版社/メーカー: Mcgraw-Hill (Tx)
  • 発売日: 1991
  • メディア: ハードカバー



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