SSブログ

地球温暖化対策の中期目標に対する意見 [3. 記事]

 先に下記の記事を書きました。

地球温暖化の中期目標に関する御手洗会長発言に対する斉藤大臣の発言
http://robotic-person.blog.so-net.ne.jp/2009-05-12

 「紹介しただけではいけないなあ」 と考え、私もパブリックコメントを内閣官房副長官補付(地球温暖化問題に関する懇談会事務局)へ送りました。
 大東亜戦争などという単語を使い、「パブリックコメントのこういう使い方はしてはいけませんよ」と書きましたが、その効果は・・。

========================================

地球温暖化対策の中期目標に対する意見

はじめに

 地球温暖化対策は「地球環境を守るための戦い」といえます。戦いとして考えた場合、大東亜戦争が、政府の日本の軍事力・国力の過大評価(あるいは盲信)によってなされ、大きな国の損害を招いて敗戦を迎えたことを忘れてはなりません。
 『エネルギー白書2007年版)』(資源エネルギー庁)の「産業部門のエネルギー消費の動向」 より、製造業のエネルギー消費が大きいことが理解されます。1)
 今日の日本の国防力は政府が把握することはできますが、「地球環境を守るための戦い」において日本での中心的な役割をなすことが期待される製造業の「兵站」(企業の設備など)について、政府が全てを把握することは到底不可能です。
 この把握できないものに対して、IPCCの報告をもとに高い数値目標を掲げて企業に命じるのは、大東亜戦争中の政府と同様の愚を冒すことに等しく、政府として決して行ってはならないことです。また、仮に高い目標を立て、2020年となって目標に遠く及ばない数字が出た時に、日本がイソップ物語の狼少年と同じ立場となります。
 本パブリックコメントは「多くの国民がこう言っているから」といった根拠のない理由付けのために使用してはなりません。

(1) 我が国の温室効果ガスの中期目標(2020年)は、どの程度の排出量とすべきか

 「(1)  2005年比 -4%、1990年比 +4%」の設定が合理的な値と考えます。

 京都議定書で日本の2008年~2012年の温室効果ガス排出量の総量目標として1990年比-6%が定められましたが、2006年の速報値によれば6.4%の増加といわれます。EUに比較して日本の達成率が悪いのは、京都議定書で設定した当時のEUと日本の差が考慮されていないアンフェアな目標設定であったことはよく知られるところです。
 『2006年度の温室ガス排出量について』(環境省)の「我が国の部門別CO2排出量の推移」で産業(工業)の1990年から2006年に間に482百万トンから460百万トンへ4.6%減少していることが示されています。2)
 革新的な温室効果ガス削減技術が健在化し、2020年までに実現・普及が可能であれば高い目標設定も可能かもしれませんが、このようなものがない現在、過去の実績の延長線で考えるのが合理的です。
 産業(工業)であれば年間約0.03%の削減を果たしてきたことから、今後もこのペースが維持されると仮定することで2020年に4.2%の削減というのはひとつの考えとなります。(現在の厳しい経済環境の中、設備投資は大きな負担となり、実現は危ぶまれるのが実際ですが。)
 「我が国の部門別CO2排出量の推移」の中の運輸、業務その他(オフィスビル)、家庭は16.7%、39.5%、30.0%の増が示されています。産業(工場等)に比較すれば全体に占める率は少ないですが、これらの削減なくして目標値の達成は不可能です。
 よって2005年比-4%の設定は決して低い目標ではなく、高い目標であり、他の数値に比較して合理性を持っているといえます。

(2) その中期目標の実現に向けて、どのような政策を実施すべきか
a. 規制的措置・経済的負担措置について
 現在の世界的な経済情勢にあって規制的措置・経済的負担措置は企業に重く負担がかかることになり、「角を矯めて牛を殺す」という危険性を大きくはらんでいます。よってその適用については慎重にならねばなりません。

 温室効果ガス排出量を減らすには、国民の意識をエネルギー消費の少ない営みへと変えていくことが必要です。
 オイルショック後、テレビの深夜放送がなくなりました。今日、インターネットが新たなメディアとして登場していることから、深夜放送をやめてどの程度、エネルギー消費削減の効果があるかわかりませんが、「オイルショックの再来」と政府は真剣に考えて対応を図っている」という意思表示、そして国民の意識改革には有効と考えられます。
 1970年代に生まれた午前7時から午後11時まで営業のコンビニエンスストアは今日、終日営業となり、日本の暮らしを大きく変ました。段階的な実施が必要ですが、深夜営業をやめることで日本人の省エネに対する意識改革につなげられます。
 今日、人の口に入らず捨てられていく多量な食品があります。それらの製造・運搬に多くの温室効果ガスが費やされていることを考えると、捨てられる食品を少なくすることも重要な政策です。国民の意識改革も必要ですが、例えば「不安だから」と行き過ぎた賞味期限を設定することについては見直しが必要です。

b. 経済的助成(補助金、減税等)
 経済的助成(補助金、減税等)は企業の投資意欲を喚起(それでも現在の経済環境から限定的な面がありますが)し、着実な改善が図れていることが期待されます。
 それらの政策を実施した場合、当然、国としての支出の増とて税収の減に直面することになりますので、政府の無駄な支出をなくし、これらに対応することをセットで対応しなければなりません。

c. 留意すべき点
 日本の政策全体について、各政策が環境問題に対してどのように影響するか吟味してその実施の可否を判断することが必要です。例えば土日の高速道路の料金の値下げによって国全体として自動車走行距離数が増大(イコール 温室効果ガス排出量の増大)を招いています。経済対策が温室効果ガス削減に反する一例であり、このような観点からの見直しが必要です。

(3) その他、2020年頃に向けた我が国の地球温暖化対策に関する意見
 日本は他国に比して1970年代のオイルショックの時代から地道に環境問題に対して取り組んできたために、高い数値目標を立てることが不可能であることを世界に対して正直に申し立て、「他国への国際協力を中心とした取り組みを行う」ことを明言すべきです。
 一頃、バブルを生じたバイオエタノールで、穀物を由来するものは新たな環境問題と農業問題を引き起こしている現状があります。政府として「他の国でやっているから」と後追い的に行動するのではなく、常に「この技術は新たな環境問題を発生しないか」という視点から判断して対応していくことが必要です。さもないと税金の無駄遣いとなります。

-----------------------------------------------------------------
1) 産業部門のエネルギー消費の動向 (資源エネルギー庁 エネルギー白書2007年版)
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2007energyhtml/html/2-1-2-1.html

2) 外務省: わかる!国際情勢 Vol.9 「ポスト京都議定書」温暖化防止に向けた日本の提案
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol9/index.html

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:仕事

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 1