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将来の出版売り上げと通信、そして学びの道具としてのタブレットPCへの期待 [科学技術とジャーナリズム]

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 NHKの昨年末のニュースをながら聞きしていて気になったのが、出版売り上げに関するものでした。後でWeb検索してそれがNHKニュースの『出版売り上げ 1兆8000億円下回る見通し』であることがわかりました。このNHKニュースの記事の中で、出版科学研究所のコメントとして次のものが紹介されています。

「若い人たちが雑誌を読まず、インターネットで情報を得る習慣が定着するなか、雑誌が若い読者層を新たに獲得できなくなったことで売り上げが落ちている。雑誌を読む習慣があり、人口構成の中で大きな割合を占める団塊の世代をどう取り込むかが、当面の売り上げを左右していくのではないか」

 私の見方は異なっています。
 1990年代に携帯電話が普及し始め、それまで1世帯に1台の固定電話(基本料金2,000円以下)に携帯電話の料金(3,000円位?)が加わって通信費に関する支出が増え、やがて世帯を構成する各人が携帯電話を使うようになって家族割引はありますが確実に通信費の支出は増え、さらに基本料金(料金体系が複雑なため、仮にこの言葉としておきます)の高いスマートフォンの登場、急速な普及で1世帯における通信費の総額は着実に増えています。 *
 これに対して経済のバブル崩壊以降、収入が伸び悩む中で「通信費か、書籍代か」については、口座振替で自動的に支払いが行われる通信費に対して、我慢により支出の選択の可能な書籍・雑誌が敵う訳はなく、これが1990年代からの長期の出版売り上げの低下に影響していると考えられます。「通信費に家計が圧迫されて書籍を購入する余裕がなくなっている」ということを考えれば「人口構成の中で大きな割合を占める団塊の世代をどう取り込むか」と書くことは、その世代の多くが定年を迎えて経済的余裕がなくなってきていることを考えると、根拠のない希望としかいえません。(注:当初、限定的な記述でしたが、うえいばうえさんのコメントに対応して説明を付け加えました。
 スマートフォンは普及段階にあることから、この影響を受けて出版売り上げはさらに低下していくことが予測されます。出版産業に夢を抱く若い人たちにとっては厳しい見方かもしれませんが・・・。

* : 家計と通信費、書籍代の関係について触れた論文を書いたのはもう5年前のことになってしまいました。

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出版売り上げ 1兆8000億円下回る見通し NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121230/k10014530671000.html
2011 年「出版産業の現状」(出版メディアパル編集長下村昭夫)
『出版物の推定販売金額の推移』
http://www.shuppan.jp/attachments/article/455/2012%E7%94%A3%E6%A5%AD%E7%8A%B6%E6%B3%811-4.pdf
全国出版協会|目的と事業の概略・歴史:日本の出版統計
http://www.ajpea.or.jp/statistics/index.html
全国出版協会|事業報告書
http://www.ajpea.or.jp/ajpea/data/houkoku.html


■ 平成23年度「生涯学習に関する調査研究」
   『読書環境・読書活動に関する諸外国の実態調査』

 『印刷物の教科書を止めて、教科書のコンテンツや副教材となる動画などを入れたタブレットPCを教科書代わりに子供たちに渡した方がよいのではないか』
と常々考えています。
 子ども達が渡されたタブレットPCを学びのレベルによって使いこなし、「もっと詳しく知りたい」と考えた場合は学校に整備されたインターネット環境に接続してより深い知識にアクセスでき、図書館にかけられる予算の制約から旧い本しかなく、また、「もっと詳しく知りたい」という子供たちの要求に応えられる本のない学習環境から離れられ、子供たちの『学びの翼』となることが期待されます。
 
 上記のNHKのニュースを探していた時、偶然、平成23年度 「生涯学習施策に関する調査研究:読書環境・読書活動に関する諸外国の実態調査 調査報告書」(文部科学省)という191ページのpdfファイルを見つけました。なお、文部科学省の『生涯学習施策に関する調査研究』のWebページではこのタイトルだけ記載されていて、肝心のリンクがなかったのですが、検索エンジンを使ってpdfファイルのありかを見つけました。「単なるリンク忘れか、それとも一般人には簡単に読ませたくない理由があるのかな・・」です (^_^;
 この報告書の目的は下記のもので、調査内容の中で各国の電子書籍についても触れられていますが、考察の「継続的に読書活動を推進するための施策等のあり方の提案」の内容は、竜頭蛇尾とも思えるもの(できそうなことしか書かないという配慮が働いているため?)で少々、がっかりさせられました。
 この分野にご関心のある方、また、電子書籍の各国の状況について知りたい方、是非、お読みください。

「(1) 調査目的

 平成22年の「国民読書年」を踏まえ、国民の読書活動を推進していくことが大きな政策課題となっている。国民の読書推進に関する協力者会議が平成23年9月にとりまとめた報告書においても、読書推進のための様々な提言が行われ、その中で、諸外国における読書をめぐる状況などの調査・分析の必要性も指摘されている。読書活動は、学校教育、社会教育において、また、個人の趣味として、様々な形で取り組まれるものであるが、活動の実態や読書の効果等に関する科学的研究などの状況について海外主要国の全体像を把握することにより、各国の読書環境・読書活動の成果や課題を明らかにする。このことにより、日本国内で継続的に読書活動の推進を図るための基礎資料を得て、目指すべき方向性や、全国的に達成することが望ましい基準、活動推進のためのマイルストーンの設定等の施策の企画・立案に資する。」

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平成23年度 「生涯学習施策に関する調査研究」
読書環境・読書活動に関する諸外国の実態調査 調査報告書

I  調査実施概要
II  調査結果概要
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/10/22/1323725_12_1.pdf

III 調査結果
1 アメリカ合衆国の読書環境・読書活動の実態
2 カナダの読書環境・読書活動の実態
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/10/22/1323725_13_1.pdf

3 イギリスの読書環境・読書活動の実態
4 フランス共和国の読書環境・読書活動の実態
5 ドイツ連邦共和国の読書環境・読書活動の実態
6 イタリア共和国の読書環境・読書活動の実態
7 フィンランド共和国の読書環境・読書活動の実態
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/10/22/1323725_14_1.pdf

8 中華人民共和国の読書環境・読書活動の実態
9 大韓民国の読書環境・読書活動の実態
10 日本の読書環境・読書活動の実態
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/10/22/1323725_15_1.pdf

IV 読書の効果に関する調査研究の成果
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/10/22/1323725_16_1.pdf

出版物:文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/main_b7.htm
生涯学習施策に関する調査研究:文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/chousa/index.htm

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うえいぱうわ

雑誌は定期購読しているもは、ほとんどないですし
気に入った特集があったときのみ買ってますが、
情報源としてはネットのスピードと利便性には
敵わないように思います。物理的な置き場所の
制約でこれ以上本を購入するのは厳しくなって
きてるっていう特殊事情もあるんですが(笑)

by うえいぱうわ (2013-01-04 00:22) 

robotic-person

>うえいぱうわさん、
出版(書籍8000億円、雑誌9400億円)全体のうち、書籍に頭がいっていて、雑誌だけについて考えれば確かにネットからの情報が競合相手になっていますね。 早速、文を訂正しなければ・・。
ありがとうございます。



by robotic-person (2013-01-04 00:39) 

えがみ

人にもよるのでしょうが、時間が足りなくて、雑誌等を選択、購入、読む暇がなくなってきているとも言えますね。

by えがみ (2013-01-04 03:51) 

robotic-person

>えがみさん、
電車に乗った時、「座席に座っている人のうち、何人が携帯電話・スマートフォンを操作しているかな?」とよく数えます。最近は6, 7割ということも多く、メール、ゲームなどで皆さん、忙しそうです。そして週刊誌や新聞を読んでいる人の姿が少なくなったことに気付かされますね。
by robotic-person (2013-01-04 09:27) 

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