自転車と関節角と筋肉のこと [2. 道具(自転車)]
「無重力状態で観察される中性的姿勢(NASA, 1978)」を手持ちのポーズ人形で表示
・ 身体の各セグメントにおいて、筋力による合力が快適なバランスを保っているとされる。
自転車ブームの中、健康維持やダイエットへの自転車利用をテーマとする雑誌の記事、ムックなどが書店でしばしば目につきます。中には特定の筋肉の名前をあげて単純に解説されるため、読者が「それさえ鍛えれば」と誤解するのでは・・と、老婆心が生じてしまうものもあります。
例えばドアのを明ける時、ドアを押す(あるいは引く)力に対して、この力とつりあう反対方向に作用する力が足裏に生じています。このように、自転車のペダルを漕ぐのに脚の筋肉だけを考えればよいのではなく、「力の作用・反作用の関係」で、脚の加えた力を対応して、脚から上の部分に発生する力に対応する筋力が必要となります。このように特定の筋肉に着目するのではなく、全身の筋肉構造の中でどのように力が伝わるかを考えながら力のバランスについて考えながら、理解する必要があります。特に筋肉、腱と骨との結合のしかた、筋肉の収縮によって骨がどのように動くかなど、解剖学的な知識は不可欠と思います。
『ヒューマンファクター 新人間工学ハンドブック』(1989年、同文書院)の156ページに、人間の身体に重力を含めて外力を加わっていない状態で筋肉に力がはいっていない状態でどのような姿勢になるかを示す「中性姿勢」の絵が収録されています。絵の元となるNASAの文献(Anthropometric Source Book, 3 Vols. (NASA Reference Publication 1024))を検索したのですが、現在のところ、見つからないため、(このハンドブックの絵をそのまま、転載するのは著作権上、問題がありますので)手持ちのポーズ人形を使って再現したのが上の図です。
この論文がまだ、見つかっていず、母数もわからないため、確定的には述べることはできませんが、上肢より、下肢の各関節角度の±で表示される値は小さいとはいえそうです。そしてこの脚の中性的姿勢における角度に対して+、-方向、同程度の角度で動くのがエネルギー的に最小にできるのでは・・。と気づきました。
人間には関節可動域があり、その値は個人差もありますが、自転車の乗車ポジションを考える上で、最初の制約となります。そして自転車のクランクと人の脚の構成を機械的に考えれば「リンク機構」となりますので、クランクの各回転角度における脚の膝関節などを求めるのは容易にできます。
そしてペダルを踏んでいる中で、各関節の角度が上記の中性的姿勢における関節の角度に対してどのような関係にあるか・・。
バイオメカニクスの分野で既にこれに類した論文はあるかもしれませんが、ペダルを踏む力を含めた解析、結構、面白そうです。(無論、自転車のフィッティングに直結する実用的な内容となりますし・・)
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筋肉.guide
http://www.musculature.biz/
第3章「筋肉・腱・靱帯の知識」
http://www.kusamado.com/contents/sc_baio03.html
関節可動域 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%A2%E7%AF%80%E5%8F%AF%E5%8B%95%E5%9F%9F
Style1 関節可動域
http://homepage2.nifty.com/style1/kaisetsu03-13.html
日本バイオメカニクス学会
http://biomechanics.jp/
雑誌などの限られた紙面で伝えようとすると、
わかり易くというか、わかった気にさせるため
には、簡略化がいるってことなんでしょうね。
それをさらに間引いて読んじゃうから、弊害も
でてきそうです。
by うえいぱうわ (2011-09-18 09:37)
ロードレーサーのフィッティングについて解説された記事などが多いですが、導入部抜きで本論に入るという感じのものが多いですね。自転車文化という観点からはもっと広い知識から解説した方がよいのではと、こんなblogを書いてみました。しばらくこのシリーズを続けようと考えています。
by robotic-person (2011-09-18 17:18)