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FinePix HS30EXRの三脚用バランスプレートの検討 [2. 道具(カメラ)]

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FinePix HS30EXRの逆さ吊りの刑?

 TCON-17(約260g)とFinePix HS30EXR(約687g)を組合せて「使いにくいなあ・・」と感じるのがTCON-17の重量がHS30EXRの先端にかかるため、大きなモーメントが発生し、三脚と組み合わせる場合、かなり保持力の高い雲台を用いる必要があることです。これに対応する手持ちの三脚(及び雲台)はエイブル300EX(SLIK)となり、約1kgの撮影機材に対して約2.5kgの三脚を持ち歩くのはしんどいものがあります。

 「ならばカメラの重心位置で三脚の雲台のカメラ取り付け部に接続できるプレートを自作すればいいのでは・・」

と思いつきました。3mm厚のアルミプレートを使えば軽量にできますし、カメラの重心に近い位置で雲台に取り付ければ、カメラの重量のアンバランスが大きい時に生じた構図の変化も低減できます。そして現在使用の軽量三脚SPRINT PROをそのまま、使用できる可能性もでてきます。


■ カメラの三脚穴の位置に関すること
 コンパクトデジタルカメラは可能な限り、省スペース設計が目指されます。ネオ一眼とされる機種でもこれは同様で、レンズの鏡筒から後の部分は光学系や電子部品を納めるための要となる領域といえます。ここに三脚穴が入ってくる余地はないと考えられます。(HS30EXRのレンズ鏡筒下面とボディ部の下面は2mm程度の差しかありません。このような納まりで三脚穴を設けるのは不可能で、仮に「レンズ中心部に三脚穴を」とこだわる場合、ボディ下側を厚くせざるを得ず、カメラの全高が高くなる方向となり、「小型化」からは逆行してしまいます。)
 また、HS30EXRはレンズ鏡筒のボディに近いところにフォーカスリングがあり、三脚ネジがレンズの中心線の鉛直線下にあったら操作性が悪くなることが想定されます。


■ FinePix HS30EXRの重心出しの実験
 ベニア板に穴を開けたものを三脚ネジでHS30EXRに取り付け、ベニア板を介してHS30EXRを逆さまの状態で紐で吊り下げ、HS30EXR単体時の広角端、望遠端、TCON-17を取り付けた時の広角端、望遠端でカメラが水平の姿勢となるように紐の位置を調整し、おおよその重心位置を求めました。(上の写真)

【重心位置の測定結果】  注:±2~3mmの測定誤差を含むと思われます
 HS30EXR単体
  [広角端] HS30EXRの三脚穴から前方に20mm、レンズ中心に近い側に17mm
  [望遠端] HS30EXRの三脚穴から前方に30mm、レンズ中心に近い側に13mm

 HS30EXR+TCON-17
  [広角端] HS30EXRの三脚穴から前方に62mm、レンズ中心に近い側に15mm 
  [望遠端] HS30EXRの三脚穴から前方に79mm、レンズ中心に近い側に15mm 


■ バランスプレートの設計

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FinePix HS30EXRの下面

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TCON-17を取り付けたFinePix HS30EXR(広角端)と下部プレートの干渉に関する検討

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TCON-17を取り付けたFinePix HS30EXR(望遠端)と下部プレートの干渉に関する検討

 FinePix HS30EXRを、自由雲台をSBH-120に交換した軽量三脚SPRINT PROを使っていて気付かされるのが、望遠端でボールヘッドを固定した後、構図が下方にずれることです。FinePix S9000とTCON-17を組合せて使っていた時(35mm判換算510mm相当)は「若干のずれはしかたない。ずれ量を予測して固定すれば・・」で対応していましたが、HS300EXRは単体で35mm判換算720mm相当でEVFで見るずれ量は約1.41倍となり、「構図が決めにくい」と感じることになります。HS300EXRのような高倍率ズームとなると、それ単体でもカメラの重心位置で雲台に取り付けられるのは有効であることが理解されます。
 カメラの重心と三脚穴がずれていることによって発生するモーメントによって構図を決めにくくする次の変形が発生します。(先のblogで自由雲台のオーバーホールについて紹介しましたが、「構図が決まりにくい」と感じたのにはこの影響もあったかもしれません。)

 ・ カメラ取り付け面のコルクの変形(モーメントにより偏荷重がかかるもの)
 ・ ボールヘッドのボール部とカメラ取り付け面の間の軸部の曲げモーメントによる変形

 このように考えてみるとカメラの重心で雲台に取り付けられるようになると、超望遠で構図をあわせやすくなるなど、メリットは大きいことが容易に推測されます。
 実験に用いたベニア板とレンズ部の干渉の具合について確認してみましたが、これは上の写真のように大丈夫であることがわかりました。


【計算】
 私のHS30EXRの使用方法として上空の月を撮影することがしばしばあります。HS30EXR単体の重心高さは約33mmです。自由雲台のボール位置を中心として考えれば、Sprint ProにつけているSBH-120のボール中心からカメラ取り付け面までの距離は40mmとなります。それにバランスプレートを付けた場合、その高さもモーメントの計算に必要となります。
 ここではカメラ取り付け面のコルクの変形の影響が大きいと仮定して雲台のカメラ取り付け面での重心位置について検討します。水平な状態から30°、HS30EXRを傾けた際に生じる重心位置の移動量aを計算すると次式より16.5mmとなります。

 a=h・sin θ =33×sin(30°)=16.5mm

 上記のアバウトな測定ですが、HS30EXR単体の広角端と望遠端の重心位置の差は10mm、TCON-17を取り付けた時の広角端と望遠端の重心位置の差は17mmで、それぞれの広角に相当する重心位置に三脚穴を取り付けて30°上方の月などを撮影する場合、HS30EXR単体の時はカメラ本体側にモーメントがかかり、TCON-17の組合せ時はほぼカメラ取り付け面でバランスが取れることになります。
 以上より、三脚への取り付け穴は、HS30EXR単体の広角端での重心位置と、TCON-17を取り付けた時の広角端での重心位置の2ヶ所とすることにしました。それでもHS30EXR単体の望遠の時で水平方向を撮影する時のモーメントが1/3に低減されます。

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バランスプレート(形状検討1)

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バランスプレート(形状検討2)

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バランスプレートの寸法図(アルミプレート、厚さ3mm)

 バランスプレートの形状について続いて検討を行いました。加工手間の少ない幅の広い形状であると、左手のHS30EXRのズームレンズの操作性が悪いのですが、幅の狭いデザインとすることで操作性については「ちょっと我慢」程度に納まることが試作品を通してわかりました。そしてカメラ取り付け穴や形状についての基本設計として上図をまとめました。

 「高倍率ズームレンズを搭載したコンパクトデジタルカメラが増えていますが、カメラの重心を雲台のカメラ取り付け位置にあわせるプレートを付属するべきでないのかなあ」
と上記の検討をしていて考えてしまいました。

下記へ続く(2012.9.13追記 )

2WAY雲台SH-703とFinePix HS30EXR用バランスプレートのプロトタイプ:ロボット人間の散歩道:So-netブログ
http://robotic-person.blog.so-net.ne.jp/2012-09-13

☆ ☆ ☆


 デジスコの世界では撮影機材の重心位置が三脚への取り付け位置にあわせられる望遠バランス雲台(『デジタルバランスPRO』(SLIK)など)といった製品がありますが、「持ち運び機材の重量を軽減したい」という私には鉄砲で済むところを「大砲を持っていきなさい」となりますので製品情報の収集のみとなりました。
 
 SLIKのSPRINT PRO シリーズのスプリント EX IIは、1ハンドルで上下・左右の両方をコントロールできるアルミダイカスト製で剛性が高いとされる専用雲台SH-703が付けられています。EX IIは生産終了ですが、SH-703が流通在庫として販売されていて、「FinePix HS30EXRのような高倍率ズームレンズとの組合せによいのでは・・」と気になって注文してしまいました。


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自由雲台のオーバーホール:ロボット人間の散歩道:So-netブログ
http://robotic-person.blog.so-net.ne.jp/2012-09-06
スプリント EX II - スリック株式会社
http://www.slik.co.jp/digital-series/sprint/4906752106297.html


SLIK デジタルテレバランスPRO S-206171

SLIK デジタルテレバランスPRO S-206171

  • 出版社/メーカー: スリック
  • メディア: エレクトロニクス



スリック 小型2WAY雲台 SH-703 470607

スリック 小型2WAY雲台 SH-703 470607

  • 出版社/メーカー: スリック
  • メディア: エレクトロニクス



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コメント 2

うえいぱうわ

レンズに三脚座がつけられないから、こういう
手段はなかなか有効そうですね。
カメラにカウンターバランスをつけるわけにも
いきませんし、メーカーもわかっているはず
なんですけどね。
by うえいぱうわ (2012-09-12 12:41) 

robotic-person

>うえいぱうわさん、
市販品を利用してのプロトタイプができましたので次のblogで紹介します (^_^)
by robotic-person (2012-09-12 22:43) 

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