3月30日、7:30頃、沖ノ鳥島工事現場でSEP船(Self Elevating. Platform:自己昇降式台船)が転覆し、作業員の5人が死亡、2人が行方不明の事故が起きました。NHKのニュースで「波の高さ2m」というアナウンスがあり、「エッ!!」となりました。昔、海の工事に計測関係で関わることになり、神戸港へいったら波が高いために作業はできないとのことで、波高1mというのが記憶に残っています。
 国土交通省 関東地方整備局(第2報)によれば、午前5時頃の現地観測による当日の海象条件は「天候 晴れ 波高0.8m 東南東の風 5.0m/s」です。海の気象状況は急に変わることがあり、事故時はこれより波高が高くなっていた可能性もありますが、工事は気象にも配慮されて行なわれ、第3報に添付の写真からはそんなに波高は高いようには見えないのですが・・。私が聞いたのが単に誤ったアナウンスだったのか・・。
 朝日新聞デジタルの記事「「想定外」の転覆、バランス失った 沖ノ鳥島死亡事故」の中で「ひっくり返ることは想定していない。ひっくり返らないように設計している」(国土交通省関東地方整備局)との発言、また、本日のニュースで作業マニュアルに従って仕事をしていることが報じられていますが、転覆したのは現実であり、そこには転覆する原因があります。当初約500tと発表され、後に700tと訂正されたSEP船の上に、長さ約45m、1本当たりの重さ170tとされる杭が4本高く突き出す構造で、全体の重心と浮力の力点と微妙なバランスで成立していて外力(曳航船による外力、波の外力(振動)などの合力。その他、転覆した桟橋と台船を結ぶワイヤに関連するものも考えられますが)により、そのバランスを失ったのが今回の事故ではないかと思います(「大和ミュージアム - キッズクラブ  船にかかる力とゆれ」に重心、浮心、復元力に関するわかりやすい絵があります)。(追記毎日新聞の記事に事故の原因に迫る記述がありました。)
 先般、土木関係の研究機関に属されていた方から、「行政のみならず、ゼネコンも手配師化し、技術(現場)が見えなくなっている」といった危惧の言葉を聞いたことがあります。この事故から工期内に工事を完了させるのは不可能と認識し、事故に真摯に向き合い、再発を防止する対策が行なわれることを願わずにいられません。