明倫館書店で『自然災害科学事典』(1988年、築地書館)を入手してきました。
本書の対象とする災害は、火山災害、地震災害、地質地盤災害、気象災害、洪水災害、海象災害で、解説には歴史、諸外国の状況について含むものもあり、「読む事典」としても大変、興味深い内容です。
本書の『序』より、昭和57年度科研費の増額補助を受けて、自然災害特別研究・自然災害資料収集研究班にキーワード用語委員会が設けられ、委員会と京都大学防災研究所の協力により自然災害研究の「キーワード用語集」(昭和58年3月)が刊行され、これに掲載の用語に準拠して、適当な学術用語を取捨選択し、それぞれの内容の解説を集成したのが本書とされます。発行から四半世紀経っていることを念頭に置いて、発行以降のことについてはWeb検索などして補うことが必要ですが、当時はどのように考えられていたとか、歴史的なことも知ることができ、参考になります。
見出し語の「
津波災害」を見ると「tsunamiが世界語として通用することからもわかるように、日本は津波災害のもっとも多い国である。(後略)」と書かれていて、津波被害に遭われた地域の方々を別として、「(中央官庁を含めて)そういう認識の欠けていたのでは」と痛感させられました。また、それに続く見出し語の「
津波防波堤」で「(略)現在、八戸、大船渡、女川、文黒の4港ですでに津波防波堤が構築されており、(略)・・、設計対象の津波は、チリ地震津波(波高6m、周期40分)と近地地震津波(波高6m、周期15分)である)。(略)」に「なぜ、近地地震津波の波高を同じにしたのだろう?」と設計で想像力を働かせることの難しさを考えさせられています。
本書を読みながら、「『自然災害科学事典』のように知識を集めた本の企画は出版不況で困難になっているのでは・・」と考えさせられています。
なお、本書の内容に海外、都市、防災行政、被害想定、復旧、情報を加えた『防災事典』が2002年に発行されています
自然災害科学事典
- 作者:
- 出版社/メーカー: 築地書館
- 発売日: 1988/07
- メディア: 単行本
自然災害科学事典
- 作者:
- 出版社/メーカー: 築地書館
- 発売日: 1988/08/05
- メディア: -
防災事典
- 作者:
- 出版社/メーカー: 築地書館
- 発売日: 2002/08
- メディア: 単行本