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「放射能汚染 ほんとうの影響を考える」、「原子力災害に学ぶ 放射線の健康影響とその対策」 [本と映像・音楽の話]

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 先のblogで原子力発電所解体プロジェクトに関わっていたことを書きましたが、それは以前のblogのブラックな環境での仕事でした。システム設計する場合、「作業者の被爆量は」、「作業者と線源との離隔距離は」を考え、「機械が壊れたら設計責任から」と被爆すること(原子力発電所等での仕事は全てと思いますが)を前提に色々、思いを巡らせていました。問題を起こすことなく停止した原子炉でさえ、その状態ですから、事故を起こした福島第一原発の現場の状況はほとんどわからない状態で「解体の計画や各種設備の設計に携わる人たちはどのような思いで取り組んでいるのだろうか」と当時の私のことを思い出しながら考えてしまいます。
 浦島 充佳 (著)「放射能汚染 ほんとうの影響を考える ー フクシマとチェルノブイリから何を学ぶか」( 2011年、化学同人)をBOOKOFF SUPER BAZAAR イトーヨーカドー流山店で入手し、その後、長瀧 重信 (著)「原子力災害に学ぶ 放射線の健康影響とその対策」(2012年、丸善出版)をBOOKOFF 埼玉三郷店で入手しました(各税込210円。なお、後者は税込510円からの割引)。
 以下、それらの本について紹介します。


■ 「放射能汚染 ほんとうの影響を考える」
 記述された内容は少しだけ広島・長崎の原爆に関連することが触れられていますが、チェルノブイリ原発事故に関するものが中心でフクシマについては事故直後の情報について一部、紹介される程度です。そもそも事故発生から2ヶ月も経たないで脱稿されていることから、福島について比較できるデータはほとんどないことは自明で、題名のようなフクシマとチェルノブイリを比較できるような内容とはなっていません*。「第5章 リーダー」として2001年の米同時多発テロなどについて書かれることも違和感を感じました。
 「あとがき」に、本書を書こうとおもったきっかけとして福島原発事故の後、2011年3月22日にNHKから原発問題でインタビューを受け、『クローズアップ現代』への出演への対応としてチェルノブイリ原発事故についての報告書や論文を読み漁り、「(国民に)原発事故による放射能の知識をもってもらうことによって精神的ダメージを少しでも避けられるのではないか」と考え、化学同人に本書の企画を出し、4月25日に本書の原稿を脱稿したことが記載されています。「拙速な企画で十分な調査もせず、短時間でまとめて発行された本」というのが私の評価となりました。


■ 「原子力災害に学ぶ 放射線の健康影響とその対策」
 本書の著者の長瀧重信先生(放射線影響研究所 元理事長)は2016年11月12日にご逝去されていますが、「放射能汚染 ほんとうの影響を考える」のような本がでたことに対して危機感を抱かれ、本書を執筆されたのではないかと思えてなりません。
 本書の「はじめに」で書かれた「(略)著者は、内科の医師として原爆被爆者の治療・調査研究、チェルノブイリ原子力発電所事故の被害者の調査研究、またJCO臨界事故の周辺住民の健康管理に携わり、被害者を通じて被害の事実を科学的な手法で調査し、その科学的な調査結果を国際的に発信することが自分の責務であると考えてきた。(略)本書は教科書のようにすべてを網羅するものではない。筆者が現実に経験したことが中心となっている。世界の被爆者、被害者の救済を願いながら、過去の人類の経験である事例から放射戦の影響を解説したい。(略)」、そして目次に示された「第1部 災害事例からみる放射線の健康影響」の「放射線を浴びると人はどうなるか」の章に続いて「原爆放射線」、「チェルノブイリ原発事故」、「東海村JCO臨界事故」、「スリーマイル島原発事故」、「ビキニ核実験」、「世界の核実験による放射戦降下物」の事例、「第2部 原子力災害の健康影響にどう対応するか」の「被爆者の防護、救済、援護」、「核テロ」、「サイエンスとポリシー」を見て、「流石、この分野に長期に取り組まれてきた先生の本」となりました。
 著者はその「はじめに」で上記のように「全てを網羅するものでない」と書かれていますが、読んでいて「私たちにとっての教科書として最初に読むべき本」と考えるに至りました。


*: イエンス・ベルガー (著), 岡本 朋子 (翻訳)「ドイツ帝国の正体 ― ユーロ圏最悪の格差社会」(2016年、早川書房)について書いたblogの中で「日本では、本の書名は出版社の専権事項のようで「売らんかな」で原書名と関係ない刺激的な書名がつけられることもしばしばです)。」と書きました。

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『写真記録 チェルノブイリ消えた458の村』を入手:ロボット人間の散歩道:SSブログ
https://robotic-person.blog.ss-blog.jp/2012-06-24
6月30日に村山書店と小宮山書店で入手した本:ロボット人間の散歩道:SSブログ
https://robotic-person.blog.ss-blog.jp/2018-07-23-1
「ドイツ帝国の正体 ― ユーロ圏最悪の格差社会」:ロボット人間の散歩道:SSブログ
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放射能で首都圏消滅―誰も知らない震災対策:ロボット人間の散歩道:SSブログ
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18年版「ブラック企業大賞」で思い出すこと:ロボット人間の散歩道:SSブログ
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放射能汚染 ほんとうの影響を考える - 株式会社 化学同人
https://www.kagakudojin.co.jp/book/b92139.html
チェルノブイリ原発事故
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/Henc.html
Dr.浦島充佳 公式サイト
http://dr-urashima.jp/
分子疫学研究部|東京慈恵会医科大学 基礎・臨床講座
http://www.jikei.ac.jp/academic/course/30_bunsieki.html
原子力災害に学ぶ 放射線の健康影響とその対策 - 丸善出版 理工・医学・人文社会科学の専門書出版社
https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b294058.html
長瀧重信|論座 - 朝日新聞社の言論サイト
https://webronza.asahi.com/authors/2011040800014.html
長瀧重信 | IWJ Independent Web Journal
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%E9%95%B7%E7%80%A7%E9%87%8D%E4%BF%A1
放影研元理事長の長瀧重信(ながたき・しげのぶ)氏が2016年11月12日(土)に84歳の生涯を閉じられました – 公益財団法人 放射線影響研究所 RERF
https://www.rerf.or.jp/information/00000151-2/


放射能汚染 ほんとうの影響を考える:フクシマとチェルノブイリから何を学ぶか (DOJIN選書)

放射能汚染 ほんとうの影響を考える:フクシマとチェルノブイリから何を学ぶか (DOJIN選書)

  • 作者: 浦島 充佳
  • 出版社/メーカー: 化学同人
  • 発売日: 2011/07/31
  • メディア: 単行本



原子力災害に学ぶ 放射線の健康影響とその対策

原子力災害に学ぶ 放射線の健康影響とその対策

  • 作者: 長瀧 重信
  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2012/01/20
  • メディア: 単行本



放射線被ばくによる健康影響とリスク評価

放射線被ばくによる健康影響とリスク評価

  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2011/11/30
  • メディア: 単行本



内部被曝の脅威  ちくま新書(541)

内部被曝の脅威 ちくま新書(541)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2005/06/10
  • メディア: 新書



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