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「土曜サロン」(2018年3月31日、日本プレスセンター)とメディア・リテラシー [科学技術とジャーナリズム]

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 早稲田大学メディア文化研究所の「メディアの将来像を考える会」に参加したことを本blogで時々、書いていますが、記者、記者OBの方々の語り合いの場として発足した「土曜サロン」(リンク先は「土曜サロン」を紹介する日本記者クラブ会報(2018年3月10日第577号))が隔月の最終土曜日にプレスセンターで開催され、3月31日にその100回記念シンポジウムがあることを「メディアの将来像を考える会」の世話人の方からお教えいただきました。評論家の武田徹氏、ジャーナリストの津田大介氏も参加とのことで、先のblogのように会に参加しました。
 武田氏、津田氏の講演の後、サロン世話人の中江利忠氏(朝日OB)、小田貞夫氏(NHK OB)からの発表があり、私的には津田氏、小田氏の講演を特に興味深く聞くことができました。講演の時間が長くなり、30分延長されましたが、会場の使用時間の終わりとなる午後5時になっても、発言したい複数の手がまだ挙がっていました。私も津田大介氏が触れたユーザーのメディア/情報リテラシーに関連して、「メディアリテラシー教育の必要性が認識された時、文部省がコンピュータリテラシー教育にすり替えて情報機器の導入に予算をつけ、扱いやすい国民をつくることをした影響が現在の新聞などの凋落に影響しているのでは、そして報道各社がメディアリテラシー教育に協力してとりくまないと事態は解決しないのでは」と発言したかったですが、諦めました。

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■ 「メディア・リテラシー」
 菅谷明子著「メディア・リテラシー―世界の現場から」 (2000年、岩波新書)はメディアとどのように接していくか、教育面の重要性を認識させてくれた本です。
 メディア・リテラシーに対する文部科学省の現在の取り組みが気になってWeb検索したら、「教科書の改善・充実に関する調査研究報告書(国語)-平成18、19年度文部科学省委嘱事業「教科書の改善・充実に関する研究事業」-」「(2)メディア・リテラシー教育の教材を改善・充実させる」の中で、

 「(略)これまで「メディア・リテラシー」と言えば、一般には「読み書き能力」とか「情報識別能力」と言い換えられて、主にテレビや新聞などのメディアから送り出されてくる情報を批判的に読み解いていく能力のことと考えられてきた。つまり、文字と共に映像や音声として送り出されてくる情報の意味するところを批判的に読み解く能力を育成する教育が提唱されてきた。
 このように考えられてきたメディア・リテラシー教育における「リテラシー」の実態は、文字であれ音声、映像であれ、それを読む(解釈)読み手、すなわち受け手主体の問題に多くの比重がかけられてきたことは否めない。
 身近にある「メディア・リテラシー」関係の文献の大半がそのような実態を物語っており、これは問題である。(略)」

と「メディア・リテラシー」に対する考え方を否定する記述を見つけました。そして行政の常で「国語教育だから」と限定せず、拡大解釈して対応するのは容易に想像され、愕然としました。
 みずほ総合研究所株式会社が委嘱されて平成20年3月に発行されたこの報告書を見ながら、昔、あるシンクタンクに彼(担当者)が描いているシナリオで書くことを求められ、対応しなかったことを思い出し、シンクタンクも発注者の要求に応じてまとめようとすることを思い出しました。

■ 前川講師問題
 文部科学省が名古屋市立中学校で講師を務めた前川喜平・前事務次官の授業内容や録音データの提出を市教委に求めたこと、「軍国主義の時代の思想統制の発想」としか、私には思えません。みずほ総合研究所株式会社に「メディア・リテラシー」について書かせた人物に関連する人物が関わっているのか、と気になります。
 教育は国の根幹となります。それに対して「考えない人間をつくる」ことに文部科学省が躍起になっているようで「この国はどうしてしまった?」とやりきれない気持ちでいっぱいです。

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日本記者クラブ会報(2018年3月10日第577号)
https://s3-us-west-2.amazonaws.com/jnpc-prd-public-oregon/files/2018/03/803a822c-8a75-41b2-b2e4-59e037ffd780.pdf
「刑務所の「いま」を知る写真展」(4月1~7日、千代田区立日比谷図書文化館)、TOKYOダジャン祭り(4月1日、日比谷公園):ロボット人間の散歩道:So-netブログ
http://robotic-person.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-2
メディア・リテラシー - 岩波書店
https://www.iwanami.co.jp/book/b268499.html
メディア教育の制度化―オンタリオ州の経験
https://milunesco.unaoc.org/wp-content/uploads/2012/10/article10.pdf
日本とカナダのメディア・リテラシ-の現状
http://www.i.hosei.ac.jp/~sakamoto/student/1999/hosei/suetake/kanada.html
カナダにおけるメディア・リテラシー教育(<特集>メディア・リテラシー)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkg/48/7/48_KJ00002308624/_article/-char/ja/
第1 章 発展するメディア・リテラシー教育 - 国立教育政策研究所
https://www.nier.go.jp/kankou_kiyou/kiyou132-115.pdf
カナダのメディア・リテラシー教育 から見える教育像
http://www3.kumagaku.ac.jp/research/sw/files/2011/12/54P2-4.pdf
第5章 イギリス・カナダ・日本におけるメディア教育 - 特殊研究 島本聡
https://sites.google.com/site/teshuyanjiudaobencong/home/mediariterashi/di5zhang-igirisu-kanada-ri-benniokerumedia-jiao-yu
イギリス・カナダ・オーストラリアにおけるメディア・リテラシー教育カリキュラムの比較研究|書誌詳細|国立国会図書館オンライン
https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000002-I10381341-00
『メディアリテラシー教育(浅井先生)』 | NPO法人日本教育再興連盟(ROJE)
http://kyouikusaikou.jp/activity/taiwapj/media/media/
日本教育工学会―SIG活動
https://www.jset.gr.jp/sig/sig08_20170318.html
教科書の改善・充実に関する調査研究報告書(国語)-平成18、19年度文部科学省委嘱事業「教科書の改善・充実に関する研究事業」-:文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/seido/08073004/002.htm
前川講師問題:なぜ要請「詳細に」 文科省のメール公表 - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20180316/k00/00e/040/257000c
知事と名古屋市長が文科省批判 講演内容照会問題:愛知:中日新聞(CHUNICHI Web)
http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20180320/CK2018032002000054.html
【談話】文部科学省による学校と地方教育委員会への不当な教育介入に断固抗議する!
http://www.kyouiku-net.org/hpyou/siryou/new%20folder/zenkyoumaekaeakouendanwa.pdf


メディア・リテラシー―世界の現場から (岩波新書)

メディア・リテラシー―世界の現場から (岩波新書)

  • 作者: 菅谷 明子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000/08/18
  • メディア: 新書



カナダのメディア・リテラシー教育

カナダのメディア・リテラシー教育

  • 作者: 上杉 嘉見
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2008/02/08
  • メディア: 単行本



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